会報(ニュースレター)一覧

カラフルライフVol.53(2010年12月号)

目次

  • 田中康雄先生のドクターのつぶやき
  • 希望の光がさす時  
  • 品川裕香さんの子ども支援最前線 
  • 点滴?みたいなQ&A
  • 事務局から
  • るるこの まーいーか・・・
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エピジェネティクス:人は環境で変わる

 エピジェネティクス(英語: epigenetics)という言葉を聞いたことがありますか?
これは、もともと持っていた遺伝子が環境により発現が制御されたり変化したりすることを、遺伝学的あるいは分子生物学的に研究する分野です。
 遺伝子突然変異は、DNA配列の突然変異として実証されてきましたが、最近では、DNA配列の変化を伴うことなく、DNAへの後天的な作用により形質(生物のもつ性質や特徴)変異が生じる機構も発見されました。そのため、形質発現の調節機構にも研究の中心が移り、このエピジェネティクスが注目を集めるようになっています。
 具体的には、一卵性双生児が、異なる体験をし、異なる人と結婚し、お子さんを生み育て、異なる環境で生活すると、本人の行動様式や性格が変わることを、私たちは体験的に感じています。同じ遺伝子(DNA配列)を持つ一卵性双生児は、DNA配列が変化しなくても環境の違いで行動や性格などが変わる可能性があります。エピジェネティクスとは、この可能性を証明する研究ということなのです。
 他にも、発達障害の症状が、担任の先生が変わったら落ち着いたとか、親が子どもの特性を理解して対応を変えたら親子ともに心と行動が安定してきたなど、こういった話は日常的にあることです。

 約13年前、留学中の私はアメリカのある学術集会で、ADHDが出やすい遺伝子が3種類あり、その個数が増えるとADHDの出現頻度が高くなるという衝撃的な情報を得ました。しかしそのことは、あまり講演会などでは話をしませんでした。しかし、エピジェネティクスという研究分野が注目されてきたので、一般の方にもお伝えするべき内容と思います。これからは、ADHDの誘発遺伝子のスイッチを「ON」にする「OFF」にする、その環境因子が研究される世の中になるかもしれません。
 ここで注目したいのは、遺伝子のDNA配列が変化するわけではないので、ADHD症状が完全になくなるわけではないと言うことです。あくまでも『そのスイッチをOFFにする因子がありそうだ』ということなので、逆に言えば、『環境が変わればいつでもまたONになる可能性がある』ということです。「発達障害は親子関係の改善で治る」と主張する方もいるようですが、「発達障害は親子関係の改善で治る」のではなく、「発達障害は親子関係を含む対人関係で表現形が変わる」 ということが、エピジェネティクス的には正しいと思います。
 振り返ってみると、私のADHD症状の出現を左右したものは:
①カリスマティックアダルト(人生に影響を与える人)
②成功体験や失敗体験:その後の処理が特に重要
③キーパーソンの言葉がけ:肯定的か否定的か、行動修正のアドバイス
④情報:留学、バークレー博士の講演でADHDの存在を知り自己理解が深まった事
⑤ADHDの診断と薬物の服用
⑥ストレスマネジメントの習得
以上が、特に私のADHD人生のQOL(生活の質を)変えたといえます。
 当事者の話を聞いても、セルフモニタリング力が弱い発達障害のある人には、成功体験と失敗体験やキーパーソンの的確なアドバイスや支援が、その後の人生を変えているのがわかります。私は今、学研の月刊誌「教育ジャーナル」で連載している『カリスマティックアダルト:出会いが人を変える』というエッセイを執筆しています。毎月一人、人生を変える出会い・体験を紹介していますが、本当に「人は出会いで変われる」と実感しています。

 「エビデンスベースド」evidence-based(証拠に基づく/科学的根拠のある)といいますが、多くのことは、最初は「なんかいい・たぶんいい」というエビデンス(証拠)のない体験の積み重ねから研究がスタートし、エビデンスになっていきます。多くの人が、環境で人は変わる、体験で人は変わると感じてきました。その実証研究が広まるといいなと思います。
 目の前の子どもやクライアントと丁寧に関わることから、その人に合ったオーダーメイドの支援法が見つかるはずです。大切なのは正しい情報と、その使い方と言えます。今後もえじそんくらぶではQOLを高めるための情報を提供していきたいと思います。
 ご入会いただきますと、ADHDなどの基本的情報が網羅された冊子を進呈しています。是非情報がなくて困っている方にご入会をお薦め下さい。事務所では個人相談(有料)も受け付けています。詳細をHPでご確認のうえ、ご予約下さい。  (高山恵子)

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