会報(ニュースレター)一覧

カラフルライフ Vol.46(2009年10月号)

目次
  • 田中康雄先生のドクターのつぶやき
  • 品川裕香さんの子ども支援最前線
  • 点滴?みたいなQ&A
  • るるこのまーいっか・・・
  • えじそんママのHappy子育て・KYのつれづれ話
  • えじそんくらぶの会・講演会情報
  • エンジョイ☆ADHD・お知らせ
聴くということ・話すということ

田中康雄先生から、新刊の「支援から共生への道 ~発達障害の臨床から日常の連携へ~」(慶応義塾大学出版)をいただきました。これはエッセイ集という感じで、田中先生の幼少期から今日までの個人的なエピソードが盛り込まれています。その中から一つ紹介したいと思います。

 いじめを苦にしての自殺企図か、学校で化学薬品を服用しようとして入院した、面接で完全に話をすることを拒否した高校生とのエピソードがありました。拒否が強いので帰ろうとしたとき、「実は、僕も君くらいのとき学校でいじめられてね。」と先生が自分のいじめの話をしたら、彼はじっくり聞いて、最後に、「もう退院する。いじめられたのは僕だけじゃないし」と言って本当に退院したというエピソードがありました。
 「聴く」ことでなく「話す」という行為でCURE(癒し)が成立するんだ。という事実が確認できて私はうれしいのです。というのも 私は「傾聴が苦手なカウンセラー」というすごいコンプレックスがずっとあります。(私は臨床心理士資格を持っていますが、実はあまり傾聴が得意ではありません)
 私のことをよく知っている方は、私が臨床心理士の資格試験の二次の面接で、こともあろうに試験官の質問をさえぎり熱弁をふるって、「しゃべりすぎ」で落ちたエピソードをご存知でしょう。ADHDである私に臨床心理士がつとまるか、一人落ち込んだ時もありました。そんな私にも、「講演する」ということで、「多弁」というADHDの症状があっても、少しは社会貢献できることがわかりました。

 私に講演の仕事がかなり増え始めた頃、自分がADHDであるということを、ある講演会ではじめてカミンングアウトしたことがありました。「実は私はADHDなんです」といった時、200人くらいいた参加者が一斉に私を見ました。その感覚は今でも記憶しています。
思えば、例によって深い配慮もなく、気がついたら言っていたという軽率な行動でした。
参加者の感想は、おおむね好意的でしたが、たったひとり、「自己開示して、いい臨床が出来るのか」という厳しい批判が臨床心理士からありました。それ以後、自分がADHDであることをオープンにすることがいいのかどうか、悩むことが多々ありました。

 福島の講演会だったと思います。ある会員さんが、話し終わった後、挨拶をしにきてくれました。「いつも高山さんの失敗のエピソードに勇気付けられます。私のADHDは、高山さんより軽いんだといつも思うんです。私よりひどいADHDの高山さんが明るく生きている姿を思うと、自分でもっと自信を持ってもいいかもと思うんです。ありがとうございました。」と涙ながらに感謝されました。私は当時、会報紙の中で、私のおっちょこちょいのエピソードを書くコラムがキライで、早くこの企画を没にしたいと考えていました。
でも、「いつもNLはここから読む」という方が案外多く、多くの読者が、「私と同じ」とか「私の方がマシ」という感覚で、どうも癒しの効果があることがわかり、今では4コママンガに昇格しています。
 こんな体験から、支援者も不完全で悩みながら臨床してるというスタンスを示すことは悪いことではないと考えるようになりました。
私のストレスマネジメント講座では必ず、自分にはADHDとLDがあるという話から入ります。すると「実は誰にも言ってなかったけれど、自分や息子がADHDで苦しんでいる」という、初回面接では出てこなかった重要なお話が、たくさんでてきます。
話すことにとって相手が素の自分を自然に出せる空間をつくる、そして自ら治癒していくお手伝いをする。これが私の臨床心理士としてのスタイルなのかもしれません。
最近私はサインを求められた時に、There is something only you can do.(あなただけにできる何かがある)と、このメッセージを添えることにしています。よく考えると、実は相手に対するメッセージと同時に常に、There is something only I can do.(私だけにできる何かがある。)という自分への自己暗示として言葉がけ、セルフトークがあるように思います。
「聴くこと」が苦手なカウンセラーですが、「話すこと」でエンパワーのお手伝いをすることができるかもしれない。そしてそれが、something I can do なのだと、田中先生のこのエッセイを読んで、少し自信がつきました。是非皆さんもご一読下さい。読み手によって感じ方が全く違うそんな「癒し効果のある本」です。えじそんくらぶのHPからもご購入いただけます。(高山恵子)

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