会報(ニュースレター)一覧

カラフルライフ Vol.44(2009年6月号)

目次
  • 田中康雄先生のドクターのつぶやき
  • くすりのはなし「ストラテラ®カプセル」
  • るるこのまーいっか・・・
  • 品川裕香さんの子ども支援最前線 
  • 点滴?みたいなQ&A
  • えじそんママのHappy子育て 
  • えじそんくらぶの会 
  • エンジョイ☆ADHD ・お知らせ
  • ズレちゃんの今日も元気 
医療モデルの限界

 5月下旬に日本精神神経学会(神戸)で、「成人のADHD」という話題提供をする予定でしたが、神戸市内で新型インフルエンザの感染が確認され、開催中止になりました。今回は、そこでお話したかったことを書きたいと思います。

 発達障害の支援では「医療モデルの限界」というキーワードがよく出てきます。では医療モデルとは何でしょう。 私が考える医療モデルは、「不要で害がある病気や障害を取り除く、治療する」というイメージがあります。ですからADHDの場合、この医療モデルでは、「障害の主症状である問題行動:不注意、衝動性、多動性を減らすための薬物などの治療」ということになるのでしょう。
 ここで私が疑問に思うのはまず、「本当に不注意、衝動性、多動性は不要で害があるものなのか」ということです。たしかに、環境や周囲の人の評価では、場合によっては、不要なもので害があるものかもしれません。でも100%常に害があるものではないし、「不注意、衝動性、多動性」を単純になくすことだけが理想の治療とは思えません。ですからえじそんくらぶは設立当初から「ADHDは理解と支援で個性になる」と「医療モデル」だけでなく「社会モデル」の視点も重要視、ICFの重要性を啓発してきました。

 話は変わりますが、昨年、大学時代の友人が癌の闘病生活をしていたときにも医療モデルの限界を感じました。最近は医療技術の進歩で、癌は死の病という以前のイメージは薄くなり、「早期発見で癌を完治する、癌とともに生きる」という時代になりました。慢性疾患と同じように化学療法などを長期間使いながら、生活することが可能になったのです。
 私は、25年位前にやはり癌だった母の看病をしたことがあります。その時から比較すると、医療は高度化し、専門性は高くなり、薬物も多数開発され、血液検査や画像診断も精度を増すようになりました。しかし科学的な診断の精度が増したことで、ドクターは問診で患者の話をじっくり聴き、顔の表情をよく観察して、心も含めた患者全体を観察するというコミュニケーションが減ったような気がします。見るのは、検査データの数値やCTなどの画像であり、患者の苦しみや様々な心の葛藤はあまり重視されない印象があります。インフォームドコンセントという概念が広まり、ダイレクトに事実を伝えることも多くなりました。正確に伝えるということは確かに重要なことです。しかし患者やその家族の思いを配慮する場面は少なくなっているように感じました。

 これからの体験から私は、医療従事者すべての人に、ICFのモデルを念頭に入れて治療してほしいと思うようになりました。ICFのモデルは病気や障害で心身機能不全があっても、活動や参加の質を高めるための環境因子を考えるという医療モデルと社会モデルを融合した初めての障害や病気のモデルです。まさにICFの理念を基本にすれば「癌などの治療の目的はあくまでも、その人の活動や参加の質つまり、QOLを高めることが重要で、そのための選択肢の一つとして、医療的ケアがあり、その医療的ケアの中には手術や薬物療法だけでなく、専門家の態度(言葉がけ)が環境因子として重要なのだ」と解釈できます。
 最近、ストレスが多くの病気や障害の原因ということが解明されてきました。ストレスは度を越すと免疫力を低下させます。ストレスはまさに環境因子に左右されます。環境と本人の主観の産物で、当事者がどう思うかで、個人差が大きいものです。また薬理学的に有効と証明されていなくても「効く」と本人が思うと、プラセボ効果で症状が改善することもあります。まさに、「病は気から」ということわざ通りなのです。でもあまり「気持ち」だけに焦点を当て、科学的な検査アセスメントを無視し、実態把握を怠ると最終的にいい結果は出ないでしょう。
考えてみるとこれは、癌治療も発達障害も全く同じです。科学的な視点と一件非科学的なように思える「主観」を大切にする視点とが支援のために重要なのでしょう。実は、この主観がICFの項目にないのです。「主観」の一部にセルフエスティームや幸せと感じる感情、罪悪感などが入ってきます。つまり「不注意、衝動性、多動性」と言う障害があっても当事者や親がどうとらえるかで、セルフエスティーム、罪悪感、ストレス、対人関係、やる気、抑うつ的な感情、不安などは変化します。そしてそれかを変えることができるのは、やはりクスリというより人とのかかわり、言葉なのでしょう。親支援講座、ストレスマネジメントはさらに今年度もバージョンアップしています。是非ご夫婦でご参加下さい。インフルエンザも気をつけましょう。特に多動な方、国内外を動き回る時は、ご注意を!(高山恵子)

カラフルライフ Vol.43 (2009年4月号)
カラフルライフ Vol.45(2009年8月号)
トップ >> えじそんくらぶの活動報告 >> 会報(ニュースレター)一覧 >> カラフルライフ Vol.44(2009年6月号)