えじそんくらぶの活動報告
会報(ニュースレター)一覧
目次
- 田中康雄先生のドクターのつぶやき
- こころへの手紙(東京「E-CHAP」代表 井手籠栄理子さんのエッセイ)
- 品川裕香さんの子ども支援最前線『特別支援教育と教育再生会議 その2』
- ADHDといじめ「15の春」によせて(投稿)
- 医療の中でできる支援
- 誤解を生じさせるメディアなどの報道に関する報告
- ズレちゃんの今日も元気
障害受容と告知について
「子どものためだから障害受容しろしろとドクターや先生から強く言われ、私は疲れ果ててしまいました。記憶力がとてもよく、どうしても自分の子どもに自閉症があると思えないんです。そんなに障害児だと認めないことがいけないことなのですか」といって泣き崩れたお母さんがいました。私は「したくなければ無理に障害受容はしなくてもいいですよ。」と言いました。そしてしばらくして落ち着いてから、「お子さんがどんなことがわからないで困っているのか、その特性をまず理解してあげませんか」と話しました。そんな体験の繰り返しから、この国で知的障害のない軽度発達障害の告知と障害の受容は、欧米のように簡単にはいかないし、弊害もたくさんあると痛感しています。
私は、これまでこのような、「涙の物語」をたくさん聞いてきました。その度に、このような親御さんをサポートする仕組みをアメリカのプログラムの翻訳版ではなく、日本の文化の中で活用できるものをつくらなければと強く思い、親支援の活動に力を入れてきました。えじそんくらぶの仕事をしていて感じることは、「みんながんばっている、だけどうまくいかない」という状態です。そんな苦しみを少しでも減らすお手伝いがしたくて、この本「育てにくい子に悩む保護者サポートブック~保育者にできること~」(学研 3月20日発売)を作りました。
この中で、皆さんに提案したいことは、「障害受容を親に強制しない支援」のあり方です。従来の障害児保育、教育と呼ばれているものはほとんど「障害名を告知し、親が障害受容するところからスタートする支援」でした。しかしこれは障害に関してマイナスイメージが強く、良妻賢母という価値観のもと、より親子関係が密着している日本では、かなりのダメージを親に与えます。特に知的障害のない軽度発達障害の告知と受容は、周囲の無理解もあり、さらに母親を追いつめることにもなりかねません。そのリスクを回避するために、まず障害の有無を決めるためのアセスメントや評価でなく「具体的な支援のためのこどもの視点での行動の分類」を提唱したいのです。
2次障害がまだない早期に介入すると、この本で紹介している、「3つの行動の分類」と「親のストレスマネジメント」をやっていくと「子どもがどんなことで困っている」か親が客観的に子どもの行動に気がつくようになります。
私はこの本で、強調したいのは「子どもの第1の特性を理解し、第2の特性を豊かな人生が送れるように育むことが子育てであり教育である」というメーセージです。子どもには生まれつきの特性があります。それは個性から機能障害と呼ばれるレベルまでさまざまですが、これを「第1の特性」としてまず理解し子どもが「困っている状態」を観察し、その対応法を探します。そして環境や周囲の人とのかかわりによって作られる第2の特性としては、やはりセルフエスティーム(自尊感情)という概念が重要と思います。
このいわゆる自尊感情は、「第1の特性」と強い相関はなく、環境によって形成される代表的な「第2の特性」といえるでしょう。知的障害のあるダウン症のお子さんでもセルフエスティームが高いお子さんもいれば、大学院を出て、社会的地位が高くてもセルフエスティームが低い人もいるのです。
この自尊感情は、残念ながらこの日本では高めることが難しいようです。謙遜を美徳とする日本では、「ほめる」ことは難しいし、ほめることが子どもへのプレッシャーになり逆効果になることもあります。この日本文化の中でどうセルフエスティームを高めるか、この部分は何回も書き直してやっと完成させました。
保育士さん向けに書きましたが、「軽度発達障害とは学童期前に習得する発達課題が大きくなってもなかなか達成できない状態」と考えると、この本は、「軽度発達障害のある子に悩む保護者サポートブック」でもあるわけです。(実際、現役の保育士さんが書いた具体的な子どもの支援方法は、ADHDがある成人の私の環境調整法として十分使えるものです。)ですから保育士さんだけでなく、多くの地域で親子支援にかかわる方にお読みいただきたいと思っています。そして、まだまだ不十分なところがたくさんあると思いますので、是非多くの方のご意見をいただきたいと思います。
障害名を告知することで豊かな人生を送れる方もいれば、そうでない場合もあります。「豊かな人生」のために必要な障害受容と告知も確かにあるのですが、その条件は、いろいろあり、「その人にプラスになる告知」はこの日本では、まだ多くはないでしょう。
月から本格的に特別支援教育がスタートします。障害受容の前にその子の特性の受容が不可欠です。障害の受容と告知に関してのトラブルが増えないように心から願っています。
(高山恵子)