会報(ニュースレター)一覧

カラフルライフ Vol. 30 (2007年2月号)

目次
  • 田中康雄先生のドクターのつぶやき(年頭所感)
  • こころへの手紙(東京「E-CHAP」代表 井手籠栄理子さんのエッセイ)
  • 品川裕香さんの子ども支援最前線『特別支援教育と教育再生会議とコミュニケーションスキル』
  • 先生に出会えてよかった・・・(投稿)
  • 二次障害としての「社会的引きこもり」の支援と予防を考える
    児童精神科医  山梨県立精神保健福祉センター/山梨県中央児童相談所 近藤直司
  • 犯罪報道におびえる人たち(投稿)
  • 静岡Wish 紹介・雑感
  • ズレちゃんの今日も元気
未病

皆さんは、未病という言葉を聞いたことはありませんか? 東洋医学でいう「病気ではないが、健康でもない状態」ですが、ふと思ったのは、PRE-DISORDER という概念です。

未病の定義を応用するとPRE-DISORDER は「DISORDER(障害)という診断名はつかないが、完全に健康でもない状態で、参加制約や活動制限が多少あり、豊かな生活が送れてない状態」といえます。

軽度発達障害というDISORDERはその状態像が重度から軽度までさまざまですからPRE-DISORDERの状態の場合ももちろんあります。「ADHDは障害か個性か」、はっきりしないから支援が出来ないと言われますが「ADHDという障害でもでも単なる個性でもない、PRE-ADHD」という概念を提唱したいのです。

親にとって自分の子どもに障害があることを受容するのは大変苦痛です。ご存知のように、現在の診断基準では非定型のADHD(診断基準を厳密には満たさないADHD)と診断する場合もありますが、これではやはり障害名がついたことになります。障害告知は親も当事者もショックな場合がほとんどですから

障害名がつく前の状態で支援をすることが可能になれば、障害受容を親に強制せずにペアレントトレーニングや子どものトレーニングなど適切なサポートができると思います。

日本未病システム学会ができ、いよいよ予防医学が重要視される時代になりました。専門医不足で予防的な医療までは無理という厳しい現状もあります。しかしこのようなPRE-ADHDだけでなく、アスペルガー症候群、うつ、不安障害、摂食障害も「PREのサイン」がある「DISORDERに移行する可能性のある状態」の「気になる子」や子育てにストレスを感じている親に対して「様子を見ましょう」とか「単なる性格」いう対応でなく、具体的な支援を提供し、この時期をサポートすることは大変重要です。

では軽度発達障害のPRE-DISORDERの状態の子の支援はとはなんでしょう。

その支援のノウハウは、実は、ADHDなどが認知されていなかった時代の教育と子育て、そして地域や友人関係の中に適切なナチュラルサポートとしてたくさんありました。

支援のひとつとして、子どもの特性を理解し、対処法をマスターし、セルフエスティームを下げないことが重要という視点は、えじそんくらぶの設立以来の理念です。

最近セルフエスティームという言葉が一般的になって来ましたが、誤解もあるようです。例えば自己有能感とは少し違います。自己有能感は自分が出来た!という文字通り「自分には能力が有ると体感する」ことですが、セルフエスティームは、能力とは比例しません:能力が高いからといってセルフエスティームが高いわけではないし、また能力が低いからといってセルフエスティームが低くなるわけではないのです、実際、失敗したときこそセルフエスティームを低くしないようにすることが、大切な支援といえます。

例えば「失敗してもいいんだよ、がんばったことは良くわかっているよ」といって努力した過程を認めくれる人がいたり、失敗時に実際にサポートしてくれる人の存在によって自分は大切にされてるんだと確認できると

苦手なところや失敗体験があっても、セルフエスティームは、維持できるのです。つまり「自分の弱点を含めて自分が好きであり、自分を大切にしたいと思うこと」がセルフエスティームの真髄といえます。

ほめ言葉がなくても、非言語的メッセージがわかる人は思いやりのある行動(例えば、失敗したときに大好物のお料理を作ってねぎらう)や、話を聞いてくれる人がいる、素の自分が出せる、辛いときにサポートしてくれる人がいる、「ありがとう」といってもらえる体験などが、このPRE-DISORDERの時期に非常に重要でしょう。

そして、「ほめる」という行為は、諸刃の剣で相手にプレッシャーをかけることにもなるので、慎重にしたいものです。

そんなことをまとめた親支援の本「育てにくい子”に悩む保護者サポートブック ~保育者にできること~」を学研から3月末に出します。

講演でも好評のオリジナルの「子どもの行動の3つの分類“わからない・うっかり・わざと”」を始めて本にしました。

お子さんや親御さんのPRE-DISORDERの状態にいち早く気がつき、それをサポートするためのチェックリストや支援法(ストレスマネジメントやゲームなど)を今、多くの方のご協力を得て一生懸命作成中です。完成したら、いろいろご意見をお願いします。

PRE-DISORDERの状態を放置せず、適切な介入をすることで障害児でなく、個性的な子どもを増やすことになりますね。みんなで個性的な人を増やし、豊かな人生が送れるようになればと願っています。(高山恵子)

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