会報(ニュースレター)一覧

カラフルライフ Vol. 28 (2006年10月号)

目次
  • 田中康雄先生のドクターのつぶやき(この夏の視察旅行)
  • 品川裕香さんの子ども支援最前線 (特別支援教育に導入してほしい「エビデンスに基づく指導」と「学外指導」の発想)
  • アメリカ視察報告  親・当事者の立場から
  • こころへの手紙(東京「E-CHAP」代表 井手籠栄理子さんのエッセイ)
  • 薬の話 「リタリン」
  • 地域からの発信( 「森杜」親の会宮城)
  • ズレちゃんの今日も元気
アメリカ研修を終えて ~ポジティブバイヤス~

「アメリカ研修へみんなで行こう!」竹田契一先生の一言で、品川裕香さんのコーディネート&通訳で、田中康雄先生をはじめ、ユニークなメンバーとニューヨーク州立大学バッファロー校に研修に行きました。そこでペラム博士のADHDのある子のためのサマープログラム、STPを視察しました。

まずは、バッファローのたくさんの講義の中で、「ADHDのある子は、ポジティブバイヤスがある」という言葉に引き付けられました。Positive byesは「肯定的偏り」、つまりよいところを選択的に見る傾向ですが、事実は1つでも、私たちは、たいていバランスよく客観的にその事実を見るというよりは、そのいい面だけみたり、悪い面だけ見たりすることが多いようです。

ADHD など軽度発達障害のある子の多くは、自分を客観的に見ることが苦手なので、プラスに見れば、とても天真爛漫で、失敗してもケロリとしていて、何でもできると楽天的なところがあったり、ちょっとしたことでも「自分は結構イケてる」と思いこんだり、つまり何でもポジティヴに見る傾向があるように思えます。この「ポジティブバイヤス」は、ADHDなどのある子に神様が与えてくれた贈り物だと私は思うのです。ADHDなどの障害があれば、「失敗をしない日」「忘れ物がない日」「失言をしない日」というのは、あまりありません。そして人生は、失敗の連続です。でもその度に、ひどく落ち込んでいたら、どうなるでしょうか。
そうならないように神様が、「失敗がたくさんある子だから、その時にあまり落ち込み過ぎないように、実行機能障害とポジティブバイヤスをセットで与えてくれた」と思うのです。だから私たちは、このポジティブバイヤスを上手に生かして、その子のセルフモニタリング力を高めて、自分の問題点をしっかり受け止められる子になれるように支援していきたいものです。

2次障害のうつの状態は、まさにネガティブバイヤスの状態です。何も見ても聞いても

マイナスのことばかり目に付き、自責傾向が強く、いいところが見つけられない状態で

自分はだめだと思い込んでしまうのです。今まで気がつかなかった自分の欠点が明確にわかるようになり、直面化すると、一時的に大きく、人は落ち込みます。「自分の問題点がわかること」は今後どうしたらいいかと方針がわかることですが、このときに急に、すべて自分がいけない、自分が無能だと一気にネガティブに思いがちです。

残念ながら障害があると、本人は、わざとでなくても人に不快を与えたり、迷惑をかけることが多くなってしまいます。そのことを本人は自覚してないので、自尊心を下げずに、教えてくれる人が必要です。そのとき当事者に大切なことは、「感情と行動をわけること」でしょう。人から、欠点を指摘されたらいやな気持ちや否定された気分になるのは当然です。自尊心も傷つく場合がほとんどでしょう。そこでネガティブにならずに、いい意味でポジティブバイヤスを保持して、自分の欠点を受け入れ、日常生活で困らないようにできるようになれば、理想です。

2次障害は、とくにポジティブバイヤスがネガティブに急変したり、自分ができないことがあることが明確化された時、周囲に否定されたと強く感じ不安が強くなっていく時、がんばればがんばるほど素の自分が出せなくてストレスが蓄積していく時などに、いろいろな症状として出るように思います。「ポジティブバイヤスをうまく生かす」ことが、2次障害を防止しすることなのでしょう。

また、他にもSTPのプログラムは多くの示唆を与えてくれました。「今、私たち日本人がすべきこと」と一番痛感したことは「後進の育成」です。今、日本では数少ない専門家に仕事が集中し、「燃え尽き症候群」になりそうなくらいばんがっている人が多いのが現状です。支援者の育成が、急務です。

この夏のプログラムをすべてマネジメントしていたのは、なんとぺラム先生の博士過程の院生で、このプログラム自体が、次世代のリーダーの育成を兼ねていることに感動しました。インストラクターの指導プログラム、マニュアルがかなり充実していて、全米でぺラム先生の門下生が、このプログラムを広めています。やはり日本でも指導者の育成に今後は重点を置くべきであるでしょう。またこのSTPで使われているペアレントトレニングのプログラムのインストラクターの研修システムも充実していました。今後日本に是非紹介していきたいと思います。(詳細は10月発売予定えじそん版STP報告書をご覧ください。)

類は友を呼ぶというのでしょうか、参加者は似通った特性を持ったユニークな集団となりましたが、大きな問題となる遅刻も忘れ物(やはり私が1回!)もけが人も出ず、無事に帰国できたことがなによりでした。実は、報告書にはかけない「爆笑エピソード」もありましたが、それはそれぞれの方の講演会や懇親会で「生の声」でお聞きください。(高山)

カラフルライフ Vol.29  (2006年12月号)
目次
田中康雄先生のドクターのつぶやき(どこに,誰に,何を伝えたらよいのだろう)
品川裕香さんの子ども支援最前線 (特別支援教育は「エビデンスに基づく指導」と「クラス集団の指導」のパラダイムシフト)
メディアなどの報道に関して
こころへの手紙(東京「E-CHAP」代表 井手籠栄理子さんのエッセイ)
薬の話 「リスパダール」
ズレちゃんの今日も元気

大切な命のために、私たちができること

最近は自殺の話題が多く、この問題は、まさに「セルフエスティーム(自尊心)」と密接に関係しています。自殺にはいろいろな理由があり、一般論化はできませんが、いじめが主な原因ということがよくあります。これは、きっかけは、実にシンプルで「チビ・デブ」など身体的・外見に関すること、学力や運動能力に関すること、集団でうくことなどがいじめのターゲットになります。

私も、「チビ」とよくいわれました。一番いやだったのは、実は「声」で、よくマンガの「オバQ」の声や「魔法使いサリー」の「ヨシコちゃんに似てる」といわれて(世代が違うとわからないかも・・・)、とてもいやでした。特に音楽で、みんなの前で歌う試験が一番いやで、音痴もあり、いつもクラス中で笑われたり、まねされました。

みなさんも似たようなことはあると思います。これは、実はコミュニケーションのズレでおこります。からかう方は、いじめと感じず、軽いジョークの感覚で何気なくいってしまう、また相手が笑っていると、相手が嫌がっていることもわからなくて、なんとなく続けてしまう。というギャップです。ADHDがあった私は、今思うと、いじめる側だったこともありました。すぐ、思ったことをいってしまう。そして結構しつこくて、何回も言ってしまうのです。決してわざとではないのですが「調子に乗る」という感じで、どんどんエスカレートしてしまうのです。相手が泣いてはじめて「あっ、気にしてたんだ。悪いことしちゃった。」と、後で気づくのです。

この種のいじめは、じっくりとクラスの全体の授業で次のこと:
1、違っていることは間違っていることではない、単に同じではないだけ、
2、セルフエスティーム(自尊感情・自尊心)の大切さを体感してもらうこと
3、社会的サインの読み取りや、Iメッセージ(自分の本当の気持ちや意思を伝える)や「共感の意味」などを話し合うこと
で、かなり改善されるでしょう。「いずれにしても相手がいやな気持ちになることは、やらない」この共通ルールが必要です。また、いやなことを言われても、気にしないとか、いやと相手に言うことも重要です。もちろん、自閉症系の特性を持つ子は、もっと個別の支援が必要な場合もあります。

加害者・被害者がわかっているときは、基本的にまずは被害者に話を聴きます。次に加害者。最後に両者一緒に話を聴くということになりますが、このとき大切なのは、まずは、評価をせずに、両者の話をじっくり傾聴することです。理想は、両者の話し合いの中から、解決法が導きだされることですが、応用編もいろいろパターンがあります。

校長先生の自殺もありました。ここでもやはり、この先生を責めるのではなく、どんな立場の人も、「自分ひとりで限界を超えて、がんばらずに誰かに助けが求められる」システムの構築が重要です。大人がまず「自ら助けを求める」モデルを示す必要があります。

自殺は、もっと複雑なプロセスを経ることもあります。「自分が死んだら誰か悲しんでくれるか」とか、リストカットをする時に、生きている実感がする、また解離など気が付かないうちにリストカットしてるというような、メンタルヘルスの専門家の適切な支援が必要なケースがあります。

いずれにしても、その人の居場所の確保と本音で相談できる人が近くにいることが大切です。「沈黙は金ではないし、我慢は度を越すと、美徳でない、辛い気持ちを人に伝えていいんだよ」と学校、家庭、地域で一人でも多くの人に伝えていくべきです。「がんばれ」といい続けるだけでなく、その子のSOSのサインを正確にキャッチできる人がいて欲しいと思います。

私は、中央教育審議会の学習指導要領の改訂の会議でも、NHKの番組審議会でも、自己理解と他者理解、セルフエスティーム、ストレスマネジメントの重要性について発言しています。これは、いじめや自殺が、単に個人の問題ではなく、社会全体、ある意味「自決することを美徳」としてきた、日本文化の問題ともからみ、根が深いと考えるからです。そのためには、教科書の内容、メディアの内容から広く変えていく必要があるというのが持論です。

最後に、品川裕香さん訳の、「子どもの心がうつになるとき」(エクスナレッジ出版、原書タイトルは“Help me,I’m sad.”)で、子どもがうつになったときの対応はもちろん、うつや自殺の予防、発達障害との関連の話もあります。(えじそんくらぶで取り扱い中)今、私たちができることはまず、相手の話を聴くこと:「素の自分」を出すことができ、それを受容し、承認してくれる人の存在が、子どもだけでなく、すべての大人にも必要ですね。(高山)

カラフルライフ Vol. 27(2006年8月号)
カラフルライフ Vol. 30 (2007年2月号)
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