会報(ニュースレター)一覧

カラフルライフ Vol. 27(2006年8月号)

目次
  • 田中康雄先生の  ドクターのつぶやき
  • 新連載:こころへの手紙 東京「E-CHAP」代表 井手籠栄理子さんのエッセイ
  • ADDA報告(アダ,Attention Deficit Disorders Association第12回年次大会)
  • 僕の居場所~ゴミ置き場からの脱出~
  • 地域からの発信   「森杜」親の会宮城
  • 投稿
  • ズレちゃんの今日も元気
  • 品川裕香さんの子ども支援最前線はお休みです。
再考:特別支援教育のめざすもの

私は仕事柄、軽度発達障害の研究者や特別支援教育の関係者によくお会いするのですが、溢れるエネルギー、柔軟で斬新な発想、深い研究心、違った角度からの視点、新しいことへの好奇心、好きなことへの集中と熱意、一気にプロジェクトを進める行動力・・・、軽度発達障害の要素をたくさん持った方がけっこう多いようです。

強い特性を持ちながらも成功している方の話は、支援のキーポイントの宝庫です。
その共通点とは:
1、自分の特性を活かした仕事についている
2、本人よりもその人のことよく知っている人 が周囲にいる
3、失敗体験しても対策を考え、対処している
4、セルフエスティーム(自尊心)が高い
5、自分は「何が苦手か」わかっている
6、苦手な所を助けてくれるサポーターがいる
7、ストレス発散法を知っている
8、影響を与えてくれた人や出来事に出会っている、などです。

さらに「小さい時や学生時代、軽度発達障害を知ってる人が周囲にいたわけではなく、もちろん特別支援教育というシステムはなかったことです。以前にも、障害名は知らなくても特性を理解し、対応してくれた人が少なからずいたということでしょう。

ところが今は、逆に「ADHDなど障害の内容を研修などで知っているけど、当事者の悩みや課題の本質を理解し、日常生活で困らないような支援をする具体的な方法がわからない」状態が全国で広がっている気がします。

その対応策として、最近、私は子どもの「問題行動」という見方は、周囲の大人の価値観によって評価が分かれるもので、問題の本質をとらえにくい、だから子どもから見てその問題行動と呼ばれる行為を4つに分類して、子どもからの視点で原因を考え、支援しようと提唱しています。

以前から子どもの行動観察を注意深くして、ADHDや特別支援教育などご存じなくても、この子は「わざとじゃなくて、やるべきことをうっかり忘れ、この行動を先も考えずに衝動的にしてしまうんだ」と原因を探り当て、「わざとじゃないんだね」と共感し、具体的な対応法を一緒に考えてくれるそんな大人が周囲にいたように思います

大切な事は、「機能障害があり日常生活で機能しない状態になっても、その人の人格と行動は分けて考え、その人自身の存在を否定しない」ことです。機能障害(自分で努力しても出来ない何か)があれば、生活で機能しないことが起こるのは当然です。だから一緒に機能するように対策を練る、やるべきことはとてもシンプルなのに、いろいろな壁があって、解決できないのが世の常です。

特別支援教育では、よく「連携」というキーワードがでてきます。連携には大切なことが、3つあるように思います。
①自分の限界、自分の専門性(または親とし て)の限界を知り、ひとりで頑張らない
②子どもの広義での自立を視野に入れた支援な ど、連携の目的、目標を明確にし、共通のも のとする
③実現可能な実践的な対策を考え、実行する

ここで一番大切なのは、①でしょう。限界を感じる時人は、多くの場合「自分が非力に思えたり、自分が信じている価値観が崩れ、一種のカルチャーショック状態」になります。しかし、よく考えてみれば、自分にも、ひとつの学問の分野にも限界があるのは、自然なことです。自分に限界あるからといって、自尊心を下げない工夫が必要で、そのために、この感情をクリアリング(感情を出し切って整理整頓しすっきりさせる)して、目標を明確にし、行動に移すプロセスが必要かもしれません。

このクリアリングは意外と食事をしながら、お酒を飲みながらといった、非公式の会のほうが、うまくいくように感じられます。連携とはオーケストラのようなものです。それぞれの楽器は違った持ち味をだし、互いに自分の楽器にない音色を持つほかの楽器に合わせながら、共通の目標を持ち一つのハーモニーになるのです。そのためには、初めの「チューニング」が重要です。チューニングがずれていると、どんなに各パーツががんばってもうまくいきません。それどころか、頑張れば頑張るほど不協和音が大きくなるという悲惨な結果になるのです。私は特別支援教育というオーケストラの最初のチューニングの共通言語として、 ICFの障害の概念が有効なのではないかと考えます。「障害」のある子を支援するためにはまず、すべての人の障害観を共通にする必要があると思うのです。「機能障害があっても環境因子と個人因子を改善する事により、活動と参加の質を高められる」という当事者の活動と参加を重視した、支援の基本概念が重要です。立派な報告書はできても当時者の自尊心が下がり、いじめが起こり、不登校になってしまったというケースが増えないように、真の特別支援教育を目指したいものです。

あなたの地区の特別支援教育はいま、どんな状態ですか。私も自戒を込めてまた初心に戻り、「特別支援教育のめざすもの」を再考したいと思います。(高山恵子)

カラフルライフ Vol. 26 (2006年6月号)
カラフルライフ Vol. 28 (2006年10月号)
トップ >> えじそんくらぶの活動報告 >> 会報(ニュースレター)一覧 >> カラフルライフ Vol. 27(2006年8月号)