えじそんくらぶの活動報告
会報(ニュースレター)一覧
目次
- 田中康雄先生のドクターのつぶやき (アメリカからの報告①)
- 投稿(アメリカのビジョントレーニング)
- 品川裕香さんの子ども支援最前線 (ADHDなどを持つ中学生・高校生たちが直面する現実とは?)
- 会員アンケート結果
- Dearずれちゃん(そろそろ思春期?)
- ちゃんと見えていますか?
- カナダセミナー報告①
アメリカ研修で得たもの
10月24日から30日に、竹田契一先生・里見恵子先生・西岡有香先生と共に、ロサンゼルスの非営利団体「The help Group」の研修に参加させていただきました。
AD/HDとLDのある子のレッスンでは、メルレヴィーン博士「ひとりひとり心を育てる」の、8つのシステム理論に則ったすばらしい授業を見学しました。と言っても指導法はとてもさり気なく、何気ない配慮と気配りで、文字では表現しにくいものでした。ここでは小5のときに一年間かけて、自分の AD/HDやLDを理解するための授業をするということです。やはり自己理解・自己受容、そしてセルフエスティームを高めることに重点が置かれていました。
10月31日から11月3日までは、北大の室橋春光先生・田中康雄先生と、マサチューセッツ州アマーストにある、北大とゆかりが深く歴史あるマサチューセッツ大学とその周辺の学校見学に参加しました。
インクルージョン(障害のある子が通常学級で授業を受ける)の進んだ学校見学では、先生やスタッフの笑顔が素晴らしいと思いました。生徒をそのまま包み込むような暖かさ、それは日本の学校で素敵な校長先生や先生方が持つ雰囲気と全く同じものでした。
キーワードは、やはりセルフエスティーム。ロスでもマサチューセッツでも、すべての子どもに関わる人々が大切だと口にする言葉でした。その中でも、警察官が常駐し、金属探知機が設置されている荒れている学校の副校長先生は、素晴らしかったです。私たち一行を案内する間中、出会う子ども一人ひとりの名前を呼び、声をかけていました。約1200人の生徒の名前を、すべて覚えるのが自分の目標だそうです。子どもだけでなく、先生やスタッフにもねぎらいの言葉をかけていたのが、とても印象的でした。
この先生に、AD/HDの子どものために効果があるのは何ですか。504ですか?IDEAですか?(11ページ参照)と尋ねたら、答えはどちらでもなく、「Good teachers」だったのです。結局話しはそこに行き着くのかと、思わず「I think so, too」と答えました。
他にも色々な出会いがありましたが、一番感動したのは、ある臨床心理士の女性でした。みんなでオフィスに伺うと、笑顔で「コーヒー・紅茶・緑茶、何にしますか」と言うので、「リタリンを飲んでいるので、お水を下さい」と私が答えると、「私も今、飲んでいます」と言うのです。そんな会話から始まり、その方の話は、飛んだり枝葉の話にどんどんポイントがずれたり、自分を鏡に映しているようで、とても不思議な感じでした。
臨床心理士が自己開示することに関しては、この方も自分がAD/HDであることを、クライアントに開示することがあるとはっきり言っていました。AD /HDがあってもサイコロジストや大学教授になれるということは、場合によっては勇気付けになると言うのです。「あなたもAD/HDがあっても、こうやって立派なことができているということを伝えた方が良いと思います」と言われ、私自分とても癒されました。感動で涙が出そうになり、堪えるのが大変でした。
この2つの研修ツアーに参加させて頂き、見学内容も素晴らしいものでしたが、ご一緒させていただいた先生方のさり気ない配慮にとても感動し、大変感謝しています。
AD/HDがあると、「meltdown」という状態になることがあります。急にエネルギーがなくなり、行動のスイッチがoffになり、どう言葉がけをされても集中できなくなり、ストンと力が抜けるのです。(この時に、無理にやらせたり叱責があると、特に子どもは、癇癪を起こすこともあります)私はなんと、竹田・里見・西岡先生というすごい先生方とのミーティング中にそれが起こり、部屋の壁に寄りかかり寝てしまったのです。ふと気が付いて「すみません」と謝ると、里見先生が「気持ちよさそうに寝ていたから起こさなかったの」と軽く答えてくださり、他の先生方も、目が覚めて元気になった私を、何事もなかったかのように自然にミーティングに参加させてくださいました。
マサチューセッツでも、「夜ミーティングを」と言われたとき、また「meltdown」が始まりました。北大の教授お二人に「頭がもう働かないので、朝のミーティングではダメでしょうか」と言ったら、室橋先生は「いいですよ」と気軽に言って下さいました。著名な先生方に対し、2回も常識外なことをやってしまったそんな私をありのままに受容して、配慮してくださった、この素晴らしい先生方に心から感謝しています。発達障害に関わる第一人者の先生方にご配慮いただき、とても幸せな旅行でした。
アメリカでは504条の適応で、ミーティングや授業で「ブレイクを入れる」「時間や内容を変える」なと、法の下で「配慮」となりますが、このような法律なしでも、自然にさり気なく配慮してくださる先生こそ、子どもの支援も自然で日常的なんだろうと思いました。
これらの貴重な体験を皆様に還元するために、講演会などでどんどんお伝えしたいと思います。(高山恵子)
リハビリテーション法
504条 連邦政府の補助を受けている基金やプログラムにおける障害を持つ人に対する差別の禁止
障害者が、障害を持つという理由だけで、教育(大学など高等教育も含む)や就労の活動において、その参加の自由を奪われること、利益の享受を否定されること、差別を受けることを禁止する。教育だけではなく、放課後の活動、クラブや職場においてもその障害の特別なニーズに合わせた配慮が実施される。この法律ではIEPの指導はなく、特殊教育とは別の、生涯にわたる支援法。
IDEA 「障害のある人たちの教育法(The Individuals with Disabilities Education Act)」
障害のある子どもを特別なニーズを把握し、IEP作成後、可能な限り通常の学級でのインクルージョン(包括的な状態)での教育をすすめる。必要があれば、通級、特殊学級、養護学校などで教育を提供し、私立の場合も政府が費用を負担する。義務教育終了後も通常22歳まで特殊教育サービスを無料で提供する。いわゆる特殊教育に関する法律。
ADHDの場合は、その障害のレベル、並存障害の状態により、504かIDEAのどちらか(または両方)の適応を受ける。地域や学校によってもその適応には差があり、軽度の場合は両方の適応を受けない事もある。