えじそんくらぶの活動報告
会報(ニュースレター)一覧
目次
- 田中康雄先生のドクターのつぶやき (光陰矢のごとし ~迷いと方向性~)
- 投稿(アメリカのビジョントレーニング)
- 品川裕香さんの子ども支援最前線 (「目の前の子をよく見て、SOSをキャッチする」重要性
- 講演会情報
- Dearずれちゃん(処世術?)
- ちゃんと見えていますか?
- とんとこの風景(人生万事塞翁が馬)
再び「セルフエスティーム」について
最近、本紙のコラムを執筆していただいている品川裕香さんが翻訳した本「子どもの心がうつになるとき」(本誌5ページ参照)が出版されました。増加傾向にある子どものうつについての本ですが、そこに「成長期のうつは改善する。特にうつになってもセルフエスティームが高い子は早く改善する」と書いてあります。
私はえじそんくらぶ設立当初から、「セルフエスティームを高める」ことの大切さを、一人でも多くの方に体感していただきたいと思い活動してきました。「セルフエスティーム」という言葉は、日本でも以前から「自己評価・自尊心・自己肯定感」などと訳され、専門用語として使われていましたが、私はあえて「セルフエスティーム」というカタカナで紹介することにこだわってきました。その理由は、「セルフエスティーム」にぴったりの日本語が見つからないからということです。そして、日本語訳がないというより、その概念が日本の文化で重要視されていないのではないかと考えています。
私は、言葉の種類と文化における重要度は比例するのではないかと思います。例えば、日本の文化では魚は重要で、魚の種類だけでなく、成長につれ名前が変わるほどたくさん名前があります。ちなみに英語圏では、どんな種類でも大抵「fish」の一言ですんでしまいます。
また、英語圏では、牛など家畜に関する単語は多く、家畜の年令、毛色などによる呼び方、肉の名前(体の場所によって異なる)などの言葉は豊富ですし、エスキモー(カナダ周辺では「イヌイット」と呼ばれている)の人々は、私たちが一口に言う「白い雪」を色々な種類に分類し、それぞれに名前をつけ、雪の色を使い分けているそうです。
このように文化や生活の中で重要なものほど名前の種類が多く、表現が豊かで、その違いが細かく分けられ、文化の中で重要と思われていない分野や概念の言葉は大雑把です。
日本では違う感情表現でも、英語にすると一つになってしまったりすることがあるように、英語や他国語では違う複数の単語が日本語にすると、それらに対して一つの表現しかないということもあります。いい例が「障害」という言葉です。英語では微妙にニュアンスの違うHandicap・Disability ・Disorderなども通常は「差し障りがあって害がある」という漢字の「障害」に訳されてしまいます。このように言葉は、その文化の背景である価値観がダイレクトに反映しているということがよくわかります。
自分の色々なパーツ(性格、外見、好み、得意不・得意、そして障害)を客観的に観察し、自分というイメージを自分で感じ、自分を評価し、そして生まれる自分を大切にしようと思う気持ち・・・セルフエスティームをあまり重要視しないということは、日本人の日常の会話からも聞き取れます。
あなたは「うちの子なにやってもダメなんです。」と子どもがいる前で井戸端会議の延長で何気なく話していませんか?あなたは親から冗談とは言え「橋の下から拾ってきた」といわれたことがありませんか?叱咤激励型の指導、謙遜という型での子どもをけなす言葉がけ・・・セルフエスティームの重要性を無視したコミュニケーションが、まだまだ日本のあちこちで聞かれるようで、残念に思います。
一方、アメリカで会話の中によく出てくるのは「私は自分の子どもを誇りに思っています。」とか「あなたはスペシャル(特別な存在)よ。」という言葉です。
私は最近、講演会のときによく参加者の方に「日本の学校で、子どもたちの自尊心がどう変化すると思いますか? 学年が上がるにつれ、高くなる・同じ・低くなる、どれだと思いますか?」と質問します。多くの人々が低くなると答えます。さらに残念に思うのは、この事実に気がついていても、それを実際に改善する対策があまりされていないことです。
ある小学校では「セルフエスティームを高める100の言葉がけ」を先生たちで出し合い共有して、学校全体で実践しているそうです。セルフエスティームは単に口先だけで褒めてもあがりません。褒めると行為が逆に子どものプレッシャーになることもあり、結果だけオーバーにほめるのは逆効果になります。それより「ありがとう」と人から言われる体験が、セルフエスティームアップになるのです。人の役に立っている・・・そう感じる体験(ボランティア活動、学校での係り活動、家庭でのお手伝いなど)をたくさんさせてあげるといいと思います。難しく考えずに、まず身近なこんなところからコミュニケーションを変えてみませんか。(高山恵子)