えじそんくらぶの活動報告
会報(ニュースレター)一覧
目次
- 田中康雄先生のドクターのつぶやき
- 特集:発達障害者支援法を受けて(後編)
- 品川裕香さんの子ども支援最前線
- ズレちゃんの今日も元気(4コママンガになりました!)
- Dearずれちゃん(絵本:からすたろう)
- 新連載:ちゃんと見えていますか?
- とんとこの風景⑯
発達障害者支援法、施行開始
平成16年12月3日に、発達障害者支援法が可決・成立しAD/HD などがはじめて障害と認められました。しかし、この支援法では、福祉や就労の分野で、手厚い支援が約束されているということではなく、学校や社会で単にいじめや差別が助長されるのではないかという不安が当事者と親には根強くあります。事実、「単に新しい障害を作っただけ」という専門家も少なくありません。
平成17年4月1日から全国で施行が開始されますが、全国の市町村の保健所や子育て支援センターなどの関係者の中にもまだこの支援法を知らない人も多いと予想されます。軽度発達障害や発達障害者支援法の啓発活動はこれからが重要です。また特別支援教育も名ばかりといわれないように、内容が充実したものになるよう、関係者が連携していきましょう。その中でもICFモデル(このモデルをご存じない方は、えじそんくらぶ発行の小冊子「アスペルガー症候群の理解と対応 ~新しい障害のモデルから考える~」をご覧下さい。)によって「障害の概念を変える」ことこそ最重要課題であり、障害名がつく前の支援が重要であるという、予防的な視点を現場では重視していただきたいと思います。(発達障害者支援法は、えじそんくらぶホームページにも掲載されています。)
全人口の約5%から10%くらいは軽度発達障害のある人がいると推定されています。その中には、オリンピックのゴールドメダリスト、ノーベル賞受賞者、医師、芸術家、建築家、俳優、首相、大企業の社長など多くの成功者も存在します。AD/HDの症状である不注意は「ひらめき・創造力」のもとであり、衝動性は「実行力・行動力」そして多動は「エネルギッシュ・雄弁」と見方をかえれば障害でなく、才能にもなる心身機能といえます。大切なのは不注意・衝動性・多動によって活動制限と参加制約を起こさないようにすることで、「軽度発達障害は理解と支援で個性になる」の理念のもと、えじそんくらぶの活動を続けてきました。
日本では少子高齢化の問題が、深刻化しています。すぐに4人に一人が65歳という時代が来ます。ですから一人でも多くの人材が就労し自立することが、今後の日本の重要課題といえ、この視点からも全人口の約5%から10%はいると考えられる軽度発達障害のある子や人の教育や就労支援のあり方が問われる時代になることでしょう。AD/HD、LD、 アスペルガーの特徴である「能力のアンバランス」が理解されず、支援もなく彼らの自己有能感を育てることができないまま義務教育期間が終了し、就職しても理解がなく、能力を発揮する前に離職するケースが多く見られます。これは社会的にも損失が大きく、現在のこのような教育、職場環境を一刻も早く改善する必要があることを国民全体に知っていただくことが重要です。
その視点から、2月25日号のクロワッサンという一般雑誌で、私はあえて、専門家の間でもまだ、浸透していないICFモデルを紹介しました。ICFを新たな障害の概念として、広く一般に定着させる必要があると考えたからです。ICFモデルでは、活動に制限、参加に制約があるという視点から、赤ちゃんも高齢者も妊婦さんも「障害者」なのです。障害は特別で珍しいものという古い感覚を捨て、「誰でもかつては障害児であったし、また障害者になっていく」という、程度の差はあれ、「みんな障害者」だからいたわり合い、助け合って生きていこう。という感覚こそが今の日本には必要です。一人でも多くの方に、軽度発達障害を理解していただく機会になり、質の高い特別支援教育が広がっていくことを願っています。
2 月には日本人の学生の学力低下の問題が大きくメディアで取り上げられましたが、軽度発達障害のある子へさりげない配慮や支援を通常学級で実施したら、他の気になる子が落ち着いてきた、クラス全体の学力が上がったという先生がたがいます。さりげない配慮とは、「自尊心を高める言葉がけを増やす、クラスで恥を欠かせない配慮、弱点を特性として認め支援する姿勢」などですが、日本人の学生の学力低下の問題の解決法のひとつとしても特別支援教育が機能することを多くの学校現場の方に知っていただきたいと思います。
そして、それが障害のあるなしに関係なく「すべての人」の「人生の質」の向上につながることになるのです。
(高山恵子)