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カラフルライフ Vol.16 (2004年10月号)

アテネオリンピックから学ぶこと

この夏は、オリンピック観戦で寝不足気味の方も多かったのでは? 数多くのメダリストが誕生しましたが、「陸上でメダルをとった選手の中にAD/HDのある人がいた」ということを会員の方が教えてくれました。まさに多動を活かしたということでしょう。パラリンピックでも様々なハンデを克服してチャレンジする姿は、本当に心打たれます。ハンデがあるということは、それをカバーすべく、そのほかの能力がさらに伸びる可能性があるのだと思います。私は以前に点字を触った時、指先に全神経を集中して点字を触っても違いがわかりませんでした。目のご不自由なかたは、このように視覚以外の感覚が研ぎすまされるのだと実感しました。ハンデを理解し、対処法をマスターすれば、十分いい人生を送ることができると思います。その時、理解者がそばにいれば、さらにポジティヴになり、前進する気力がでてくるのでしょう。

アテネオリンピックでは数々のドラマがあったようです。新聞にも紹介されていましたが、水泳で金メダルを2つ取った北島選手のコーチの話はとても心に残りました。コーチの仕事は、「頑張れば達成できる目標を与えること」というものでした。土壇場で大切なのは、「自分はできる」という自信だと思います。練習のときに成功体験を積むのと、自尊感情が低下するような言葉がけばかりで失敗体験が多いのでは、土壇場での精神的な安定感がちがってくるような気がします。

課題が「その人の実力+1」のレベルの時、その人は努力する気持ちを持ち、マスターし、成功体験も味わえ、自己価値観も上がりやすいのでしょう。学校や家庭でも応用したい大切なポイントだと思いました。

また、スポーツでは「過去の失敗を引きずらず行動する」ことも大切です。金メダル確実といわれた選手が準決勝で敗れ、決勝戦に進めないという場面がよくありました。ショックは大きいですが、落ち込んだままでは三位決定戦でも負けてしまいます。その時、立ち直らせるために「なんで失敗したんだ!ダメな奴だ」と叱責するコーチがいるでしょうか。きっと「よくやった。いい試合内容だったよ、君ならできる」と、結果でなくプロセスを評価し、プラスのことばがけをすることでしょう。スポーツの世界では、ごく自然にやっていることです。

彼らから学ぶことは「過去の失敗に囚われずに、落ち込まず、自分も人も責めずに目標に向かって行動する。」という事でしょう。これはまさにコーチングの基本とも言えるものなのです。「大失敗をしてしまった」という過去に囚われすぎると次の失敗を誘発する事になり、状況は悪化する一方です。

教室でも同じですよね。「忘れ物をした」という失敗に対して「何故忘れたんだ、ダメじゃないか!」と叱責するより、「忘れたら、どうしたら良いかな?」と声をかけてくださる方がどんなに良いかと思います。

例えば、AD/HDであるならば、「忘れ物をした」という事態になる事はAD/HDの無い人よりずっと回数が多くなります。その度に落ち込まず対応法を考える事が自立のために必要です。「人に助けを求める」 これができるように支援する事が、その後の人生に大きな違いをもたらす事でしょう。「人に助けを求める」という事は、実は簡単なことではありません。オーバーに言えば自分のダメな部分をさらけ出す事になるので、抵抗を感じる人も多いのです。「バカだと思われるかも」「笑われるかも」とマイナス思考が始まり、こんな事なら助けを求めずじっと我慢していた方がいい、となると問題が悪化していきます。

ハンデがあってもなくても、気軽に助けを求められる人がいて、社会全体が助け合うようになれば、人生はかなりすごしやすくなることでしょう。物理的な支援だけでなく、精神的な支え・・・できないことをできるように見栄を張ったり無理しないで、飾らないありのままの自分をさらけ出し、そのまま受け止めてくれる人や環境・・・があることが重要と思います。軽度発達障害のある人はこのような環境(ちょっとした助けを求め、小さな支援が受けられる環境)が整えば、実力が出せるケースもあります。

今、河村文部科学大臣の諮問を受け、中央教育審議会で特別支援教育についての検討が行われています。

教育は、次世代をになう人材育成の場であり、学校で体験するすべてのことが、次の世代の一人一人の学力のみならず、社会性、人格、価値観の土台になると思います。ノーマライゼーションに向けて、学校も大きく変わってほしいですね。

特別支援教育を学校で定着させることが、地域社会で従来の障害の概念を変え、「バリアフリー」を実現する第一歩となると期待しています。(高山恵子)

目次
  • ドクターのつぶやき
    心理教育相談室が持つ役割
  • カリフォルニア研修ツアー参加報告
    最新のLD・AD/HD・高機能自閉症への指導プログラム(高山担当部分の報告)
  • カラフルキッズ
    小論文・レポートのコツ
  • 子ども支援最前線
    品川裕香さんが取材した特別支援教育の現場の様子
  • Dearずれちゃん
    中学校での初面談
  • とんとこの風景⑭
  • 投稿
    身内への告知
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